そう。あの動物の猫である。
猫にはちょっとうるさい。よくペットの定番として犬と並び評される が、犬などとは較べ物にならないほど猫は勝っている。私は昔からそ う思っている。
犬は主人を見ると尾をふって愛想を振りまくが、猫はよほど空腹でも ない限りは知らん顔である。いや、この比較は正しくないかも知れな い。うちではもうかれこれ10年くらい猫と関わってきているが、おそ らく猫には飼われているという意識はない。よって主人という概念も ないのであろう。とにかく猫のクールさに魅かれる私にとって、犬の 甘えは鬱陶しい。
そういう意味で犬は所詮ペットでしかないが、猫は立派な人間の共生 者である。征服欲の強い人は猫より犬を好むだろう。ペットとして犬 を選ぶか猫を選ぶかは、すなわち忠実な下僕が欲しいか無愛想な友人 が欲しいかである。ただしこう思っているのは人間の方だけで、実は 猫の方では人間をペットくらいにしか考えていないかもしれない。実 際、最近話題になっている ``猫が書いた本(「猫語の教科書」)'' にはそう 書かれているらしい。
犬より猫の方を好むという人を周囲であまり見かけない私は、 「図書」1994年12月号の「釘を打つ音」(鈴村和成)を読んで、 これだと思った。それは、従来私が猫に対して抱いてきたイメージ と殆ど一致する内容であった。それも洒落た文章で書かれているので、 もっと猫について知りたいと思う向きにはこちらを読むことをお勧 めする。
しかしこの記事で一つ首を傾げたのは、``猫は人間に対して爪を使わ ない'' という一節である。少くとも ``うちの''(こういう言い方は私の 最も嫌うところではあるが)Duckieはよく爪を立てる。 これをもって猫が賢くないという人もいるが、それは「ペットは飼い主の 支配下にあり、当然主人である飼い主に対して従順であるべきだ」という 誤った見識から来ている。猫だっていつも機嫌がいい わけではない。主従関係を結ばず対等な関係にある人間に対し、猫はしっかり と意志表示をしているのである。虫の居所の悪い者に対してちょっかい を出す方が、猫に言わせれば無神経であろう。私もここ数年は猫の顔が 読めるようになり、 Duckieにも久しく掻かれていない。